同じシャンプーでも仕上がりが違う理由|水質とカルシウムの最新研究・美容師向け
美容室でシャンプーやトリートメントをした直後は、髪がサラサラでまとまっていたのに、自宅で同じ製品を使用すると仕上がりが違う。
美容師として、このような相談を受けたことはありませんか?
その原因として、シャンプーの使用量やすすぎ方、トリートメントの塗布方法、ドライヤーの使い方などが考えられます。
しかし、もう一つ注目したいのが洗髪に使用する水の性質(水質)です。
2026年10月20日、株式会社ミルボンは、水中のカルシウムイオンがシャンプーやトリートメント成分の吸着挙動を変化させ、洗髪後の仕上がりに影響することを確認した研究成果を公表しました。
今回の研究で重要なのは、カルシウムイオンが髪に直接大量に付着するという単純な仕組みではなく、洗髪工程でのヘアケア成分の相互作用が関係している可能性が示されたことです。
この記事では、美容師が押さえておきたい以下の内容を解説します。
- 水質とシャンプーの仕上がりの関係
- ミルボンが発表した研究成果
- アニオン性界面活性剤とカチオン性ポリマーの働き
- 硬水・軟水と毛髪の関係
- 美容室と自宅で仕上がりが違うときの確認方法
- お客様への説明方法とサロンワークへの応用
毛髪科学の知識を、日々の施術やカウンセリングに活かしたい美容師の方は、ぜひ参考にしてください。
1. 同じシャンプーでも仕上がりが違う6つの原因

シャンプーやトリートメントの仕上がりは、製品の性能だけで決まるわけではありません。
主に次の6つの条件が関係します。
① 毛髪の状態
毛髪の太さ、くせ、ダメージ、カラーやパーマの履歴によって、同じ製品でも仕上がりが異なります。
特にダメージ毛では、毛髪表面の状態が変化しているため、コンディショニング成分の吸着や仕上がりを考える際に注意が必要です。
② シャンプーの使用量
使用量が少なすぎると、髪の長さや汚れの程度によって十分に洗浄しにくい場合があります。
一方、必要以上に使用しても、必ず仕上がりが改善するわけではありません。
③ すすぎ方
すすぎ時間や水量、洗い流す部位によって、毛髪に残る成分の状態が変わる可能性があります。
特に襟足や後頭部の内側は、お客様自身では洗い流しにくい部分です。
④ トリートメントの使用方法
塗布量、塗布位置、放置時間、すすぎ方などによって仕上がりが変わります。
シャンプーだけが同じでも、トリートメントの種類や使い方が異なれば、サロンと自宅で同じ仕上がりになるとは限りません。
⑤ ドライヤーの使い方
乾かし始めるタイミング、風向き、温度、ブラシの使用方法などによって、まとまりや手触りは変わります。
特にくせ毛やダメージ毛では、乾燥工程の違いが見た目の仕上がりに影響することがあります。
⑥ 洗髪に使用する水質
水にはカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が含まれています。
これらの成分の種類や濃度は、地域や水源などによって異なります。
今回のミルボンの研究では、特にカルシウムイオンがヘアケア成分の吸着挙動に影響することが示されました。
つまり、同じ製品を使用していても、洗髪する環境によって仕上がりが変わる可能性があるということです。
2. ミルボンが2026年に発表した水質研究とは?

研究の背景
美容師にとって、水はシャンプーやトリートメントを行う際に欠かせないものです。
しかし、水は単に髪を濡らしたり、洗浄成分を流したりするだけの存在ではありません。
水に含まれる成分が、ヘアケア製品の働き方に影響する可能性があります。
ミルボンは、水質によって洗髪後の質感が変化することに着目し、カルシウムイオンが洗髪工程のどの段階で作用するのかを調査しました。
研究成果は、2026年9月28日から10月1日にオーストラリア・パースで開催された「The 36th IFSCC Congress 2026」で発表されました。
研究で確認された3つの重要な結果
① 毛髪表面の摩擦特性が変化した
カルシウムイオンを含む水を使用した条件では、シャンプー・トリートメント後の毛髪表面の摩擦特性に有意な変化が確認されました。
毛髪表面の摩擦は、指通りや毛髪同士の滑りを考えるうえで重要な指標です。
ただし、摩擦特性の変化だけで、毛髪の損傷や仕上がりの良し悪しを判断することはできません。
② シャンプー工程で成分の吸着挙動が変化した
研究では、カルシウムイオンそのものの毛髪への吸着は限定的でした。
一方、シャンプー工程におけるヘアケア成分の吸着挙動には変化が確認されました。
この変化には、シャンプーに含まれるアニオン性界面活性剤とカチオン性ポリマーの複合体形成が関係している可能性が示されています。
③ トリートメント成分の残留量が増加した
カルシウムイオンを含む水を使用した条件では、トリートメント成分であるステアリルアルコールの毛髪残留量が増加しました。
これは、シャンプー工程における成分の吸着状態の変化が、その後のトリートメント工程にも関係する可能性を示す結果です。
ただし、成分の残留量が増加したからといって、必ず手触りが良くなるとは限りません。
仕上がりは、成分の種類や組み合わせ、毛髪の状態などによっても変化します。
3. なぜカルシウムイオンがシャンプーの仕上がりに影響するのか?

今回の研究を理解するうえで重要なのが、シャンプーに含まれる2種類の成分です。
アニオン性界面活性剤とは?
アニオン性界面活性剤は、水中でマイナスの電荷を持つ界面活性剤です。
シャンプーの主要な洗浄成分として広く使用され、皮脂や汚れを取り除く働きがあります。
カチオン性ポリマーとは?
カチオン性ポリマーは、プラスの電荷を持つ高分子化合物です。
毛髪表面への吸着によって、指通りやまとまりなどのコンディショニング性能に関係します。
2つの成分が相互作用する
シャンプーに含まれるアニオン性界面活性剤とカチオン性ポリマーは、条件によって相互作用し、複合体を形成する場合があります。
こうした相互作用は、洗髪後のコンディショニング性能を考えるうえで重要です。
今回の研究では、カルシウムイオンの存在が、この複合体形成に関係している可能性が示されました。
考えられる仕組みを整理すると、次のようになります。
- 洗髪水中にカルシウムイオンが存在する
- シャンプー工程における成分の吸着挙動が変化する
- アニオン性界面活性剤とカチオン性ポリマーの複合体形成が関与している可能性がある
- その後のトリートメント成分の残留状態にも変化が生じる
- 毛髪表面の摩擦特性や仕上がり質感に違いが生じる
ここで注意したいのは、すべての段階の因果関係が完全に解明されたわけではないという点です。
研究では、成分吸着の変化や残留量の違いが確認され、その背景にある相互作用については、さらに研究が進められています。
4. 硬水と軟水では髪への影響が違う?

水質を考える際によく登場するのが、硬水と軟水です。
硬水と軟水の違い
水の硬度は、主にカルシウムイオンとマグネシウムイオンの濃度から求められます。
一般的に、これらの成分が少ない水は軟水、多い水は硬水と呼ばれます。
硬度の区分には複数の基準があるため、比較するときは採用する基準をそろえる必要があります。
硬水でシャンプーすると髪が傷む?
硬水で洗髪したからといって、必ず髪が傷むとはいえません。
水質によって洗浄成分の働きや毛髪への成分吸着が変わる可能性はありますが、それだけで毛髪損傷を判断することはできません。
また、今回のミルボンの研究はカルシウムイオンに着目したものであり、硬水に含まれるすべての成分の影響を解明したものではありません。
軟水なら必ず仕上がりが良い?
軟水であれば必ず良い仕上がりになるというわけでもありません。
シャンプーの処方、毛髪の状態、トリートメントの組み合わせなどによって、求める質感は異なります。
美容師として重要なのは、水質を単純に良い・悪いと判断するのではなく、ヘアケア製品の性能に影響する環境条件の一つとして理解することです。
5. 美容室と自宅で仕上がりが違うときの確認方法

ここからは、今回の研究を実際のサロンワークにどう活用するかを考えていきます。
例えば、お客様から次のような相談を受けたとします。
「美容室ではサラサラになるのに、自宅で同じシャンプーを使っても髪が広がってしまいます」
このとき、すぐに水質が原因だと判断するのは適切ではありません。
まずは、仕上がりに関係する条件を一つずつ確認します。
美容師向けカウンセリングチェックリスト
| 確認項目 | お客様への質問 |
|---|---|
| 使用製品 | シャンプーだけでなくトリートメントも同じですか? |
| 使用量 | 何プッシュ程度使用していますか? |
| すすぎ | 襟足や髪の内側までしっかり流していますか? |
| トリートメント | どの部分に、どのくらい付けていますか? |
| 乾燥方法 | お風呂上がりから何分後に乾かしていますか? |
| 水環境 | 最近引っ越しや水道環境の変化はありましたか? |
| 仕上がり | 広がり・きしみ・ベタつきのどれが気になりますか? |
このように確認すると、仕上がりの違いを複数の視点から考えられます。
特に、水質の影響を検討する場合は、シャンプーやトリートメントの使用条件をできるだけそろえることが重要です。
6. お客様にわかりやすく説明する方法

美容師が毛髪科学を理解していても、専門用語をそのまま使うとお客様には伝わりにくい場合があります。
例えば、次のような説明が考えられます。
「実は、シャンプーの仕上がりは水の成分によっても変わることがあるんです。最近の研究では、水に含まれるカルシウムが、髪に付くヘアケア成分の働き方に影響することが確認されています。
ただ、ご自宅と美容室で仕上がりが違う場合は、洗い方や乾かし方も関係するので、まずは普段のお手入れ方法から確認してみましょう」
この説明なら、水質の影響を紹介しながらも、原因を決めつけずにカウンセリングを進められます。
美容師に求められるのは、研究内容を説明することだけではありません。
専門知識を、お客様が自宅で実践できる方法へと変換することが重要です。
7. 水質による仕上がりの違いを毛束で比較する方法

水質がシャンプー後の髪に与える影響を確認するには、同じ条件の毛束を使って比較する方法があります。
大切なのは、水質以外の条件をできるだけ同じにすることです。
例えば、同じ種類・長さ・ダメージ状態の毛束を2つ用意し、一方を軟水、もう一方を硬水で洗います。
比較条件の例
| 比較項目 | 毛束A | 毛束B |
|---|---|---|
| 毛髪の種類・状態 | 同じ条件 | 同じ条件 |
| 使用する水 | 軟水 | 硬水 |
| シャンプー | 同じ製品 | 同じ製品 |
| 使用量 | 同じ量 | 同じ量 |
| 洗浄・すすぎ時間 | 同じ時間 | 同じ時間 |
| トリートメント | 同じ製品・使用量 | 同じ製品・使用量 |
| 乾燥方法 | 同じ条件 | 同じ条件 |
洗浄・乾燥後に、指通り、きしみ、まとまり、毛髪表面の状態などを比較します。
このように水質以外の条件をそろえることで、水質による仕上がりの違いを検討しやすくなります。
ただし、これは比較方法の一例であり、1回の比較だけで水質の影響を科学的に証明できるわけではありません。より正確に評価するには、複数の毛束を用いた反復試験や客観的な測定が必要です。
まとめ|シャンプーの仕上がりは水質によっても変わる
同じシャンプーやトリートメントを使用していても、髪の仕上がりが異なる原因は一つではありません。
今回紹介した研究では、水に含まれるカルシウムイオンが、洗浄工程におけるヘアケア成分の吸着挙動や、毛髪表面の摩擦特性に影響することが示されました。
美容師として大切なのは、次の3つです。
- 水質も仕上がりに関係する環境要因の一つとして理解する
- シャンプーやトリートメントの使用方法、乾燥方法などを総合的に確認する
- 研究で確認された結果を、日々のカウンセリングやホームケア提案に活用する
水質だけで仕上がりの良し悪しが決まるわけではありません。
毛髪科学の知識を実際のサロンワークに結びつけることで、お客様一人ひとりに適したヘアケア提案につなげていきましょう。
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